小説

ひだまりスケッチ#4


「2月6日 ガラガラ1等賞!!」




「うぅ寒いねぇ・・・・」

「確かに・・・もう2月だもんね?」

ここは商店街・・・・。

ゆのと宮子がここにやってきたのは他でもない。

先日、クラスメートの女の子からお裾分けとして福引券を貰ったのでその福引を回すためだ。

「私、運がないからなぁ・・・。」

「私は何としても3等の旬の特産物盛り合わせをゲットするんだ!!」

自信なさげなゆのと対照的に賞品ゲットに燃える宮子。

「でも1等で団体の温泉旅行だなんてここの商店街って結構奮発だね?」

確かに、普通の商店街にしては少しやり過ぎといった感じの豪華賞品の数々。

ちなみに2等は最新型のパソコンだ。

「あぁパソコンとかあったら便利かもね?」

「そだねー当たったらどこに置こうか?」

まだ当たってもないのに真剣に考え始めるゆの。

「じゃあ、沙英さんの部屋かな?ほら、沙英さんお仕事とかで!!」

「でも、沙英さんアナログ派だし・・・。というか原稿にイラついたときに線とか一切合財抜くんじゃない?」

「あぁ編集さんから逃げたり?」

「そうそう・・・ひろさんの部屋に置いた日にはダイエット商品がたんまり来ちゃいそうだね?」

「うーんそうかな?」

「その内、調子に乗って買いすぎて、破産するか、詐欺に引っ掛かるか・・・。」

宮子のすらっと言う案に体を震わせるゆの。

とまぁこういった少々強引な理由で2年生の部屋には置けないということになった。

「じゃあ、私の部屋は?」

まぁ使うことはあまりないかもしれないが・・・一応候補に入れるゆの。

宮子は少し悩んだ後にゆのの部屋もダメということになった。

理由を尋ねると・・・

「ゆのだし・・・。なんか使ってる間に爆発しそう・・・。」

「そんな漫画なことしないよー!!・・・多分。」

ゆのの反論の声は何故か段々と萎んでいく。

「じゃあ、宮ちゃんの部屋?」

まぁ消去法でそういうことになる。

しかし、宮子はそれも否定し始めた

「私の部屋に置いてもいいけど私の部屋はその内燃えるという危険性があるし、ゴキブリも出るよ。」

・・・宮子の話だけ聞いているとどこにも置けないということが判明した。

「じゃあ、どうするの?」

「売る?」

「・・・・」

(どうか・・・私達にパソコンが当たりませんように・・・)

そう、節に願うゆのだった。


そんなことしてる内にゆのたちの番が来た。

「頑張れ!ゆのっち!!沙英さんとヒロさんが御馳走持って帰る私たちを心待ちにしてるよ?」

「そんなプレッシャーかけないでよ・・・」

福引一つにゆのの声は少し泣きそうだ。

宮子の声援のもとゆのは深く息を吐いてガラガラに手を掛けた。

そして、ゆっくりとゆっくりと回していく。

ゆっくりとゆっくりと・・・

そして、後ろで見ていた宮子があることに気づいた。

「ゆのっち〜ガラガラからガラガラって音が聞こえないよ?」

「あ、うん!!」

宮子の言葉にハッとなり、ゆのは慌てて勢いよく回し始めた。

しかし、時すでに遅し!!


「お嬢ちゃん・・・玉出てるよ?ほれ白・・・スカね。」

更に顔を紅潮させるゆのだった。

「ごめんね宮ちゃん!!やっぱり私駄目だったよ!!」

「まぁドンマイドンマイ!!この宮子さまにお任せあれ!!」

そう言い、自信満々にガラガラに手を掛ける宮子。

そして、一度手前に引くと、その反動を利用したかのように、勢いよく回した。

その早技におじさんの目も一瞬ついていけず、気がついた時には持っているベルを鳴らさざるを得ない状況となっていた。

出てきた玉・・・金!!

「お、大当たり〜!!」

呆気にとられるおじさん。

そして、それ以上に驚いたのは後ろで見ていたゆのだった。

最初は夢かと思い、無意識に頬をつねってみたがその痛みが本物と確信し、嬉しさのあまり宮子に飛びついた。

「すごいね!宮ちゃん!!一等賞だなんて!!」

しかし、喜ぶゆのとは裏腹に当てた張本人・宮子は少し不機嫌そうな顔をしている。

「うぅ・・・一等賞・4名様温泉旅行1泊2日の旅・・・。3等がよかった。・・・こんなはずでは!!」

「み、宮ちゃん・・・一等だよ?」



ため息な宮子たちの後ろからまたカランカランと鳴り響く鈴の音・・・。

ゆのたちが後ろを向くと宮子達の後ろにいた男性がまたまた当たりを出したらしく、福引のおじさんはやや失笑している。

「おめでとうね!!ほれ!3等の商品だよ?」

そう言うとおじさんはなにやら引き換え券のようなものを男性に渡した。

「ん?」

男性が賞品を受け取り、帰ろうとすると何者かが男性のスーツの裾を引っ張った。

「交換・・・交換しませんか〜?」

半分泣きながら男性に懇願する宮子をゆのが少しばかり強引に引き剥がした。

「宮ちゃん、だから1等だから・・・ね?」



ゆのの頑張りもあってようやく宮子は諦めたようだ。

「くそー!!こうなったら温泉の料理に期待だ!!」

「いつ行こうか?沙英さんたちも誘うでしょ?」

ゆのは今からワクワクといった感じで声を弾ませている。

分かっているとは思うが別にこの賞品をゆのが当てたわけではない。

「今度の連休に行こう!!一泊二日だし!!余裕余裕!」

「そうだね!!どうせだから寒いうちに行きたいし。」

今から、それぞれにプランをたてる二人・・・

そして、ひだまり荘に着くと早速沙英とヒロに報告に行った。


「沙英さんいるー?」

「いるけどどうかしたの?」

いつも以上に弾ませた声でやってくる宮子。

それに少し驚く沙英とヒロ。

「ジャン!!この宮子・・・みんなにバカンスを持ってきてやったよ?」

「バカンス?」

「・・・いや。バカンスじゃないかな?安らぎ・・・ヒール?」

「宮ちゃん・・・話が進まないよ?」

どうやらどうしてもカタカナで言いたかったようで・・・



「へぇ・・・温泉旅行当てたんだ。」

「凄いじゃない!!」

思わぬ吉報に喜ぶ沙英とひろ・・・そして得意げに胸を張る宮子。

「ということで、今度の連休に行こう!!宮子観光社主催の温泉旅行!!」

「観光社って・・・」

瞳を眩しいほどに輝かせながらいつの間にか用意された宮子バスと書かれた旗を持つノリノリの宮子。



「じゃあ、早速準備しなきゃ!!」

「準備って、ヒロ・・・今度の連休まで後3日くらいあるよ?そんなに慌てなくても・・・」

嬉しそうなゆのたちとは違い、ヒロは準備のため少し真剣な表情で立ちあがった。

そして、そのまま洗面所へと姿を消した。

「あぁ・・・準備ってそっちの方か。」

3人は洗面所に入っていくヒロを見て彼女の言う準備の意味が納得できた。

「うーん・・・だ、大丈夫この現状を意地できれば・・・温泉に入っても分からない・・・きっと・・。」

体重計を足元にヒロのブツクサ言う声が聞こえた様な気がした。



しかし、そんなことはお構いなしに胸躍らせるゆのと宮子。

「あ、沙英さん沙英さん見てみて!!」

同封されていたパンフを見て宮子があることに気づいた。

沙英はなんかいい観光場所でもあったのかとパンフを覗き込む。

「縁結びの神が住んでます・・・恋紺神社?」

「こ、これがどうかしたの?」

あくまで平静を装う沙英。

しかし、沙英の心は興味と好奇心の泉で満たされ、今にも溢れそうだった。

そのせいか、沙英はずっと、そのパンフと睨みっこしてる。

そんな沙英を心配そうにみるゆの。

「沙英さんどうしたの?」

「いや恋紺神社の話したら・・・」

「レンコン・・・?」

「なんか穴だらけって感じがするね。」

しかし、沙英にはそんなこと聞こえてちゃいない。



「私はこのカニ食べ放題が楽しみ!!」

「へぇ・・・そんなのもあるんだ。私、カニの身ほぐすの苦手なんだよね・・・」

「え?あれってほぐすの?吸うんじゃないの?」

宮子、恐らくカニ初体験・・・。



「ゆのっちはなんかあっちでしたいことあんの?」

「うーん・・・私は特に・・・あ!!」

パンフをパラパラめくっているとゆのがあるものを発見した。

それは温泉効能を色々と分かりやすく説明した欄だった。

ゆのはそのある1行に注目する。

「”この温泉に入って色々なところが成長しました!!体験者:N”・・・だって!!」

これはよく聞く温泉に入ったら胸が大きくなるとかスタイルがよくなるとかそういう類のことだろうが・・・

本来は沙英が食いつく場所であると思うが初なゆのには”成長”というワードだけが頭にこびり付いていた。

「成長・・・成長・・・大きくなる・・・・。」

ゆのもまるで何かに取り憑かれるたようにブツブツと何かをぼやき出した。



その日の夜まで当日のことで盛り上がり、日がどっぷりと沈んだころでようやく、4人は解散した。

それぞれの夜を過ごす4人・・・。


「大丈夫・・・一つくらいなら・・・見られてもばれない・・・」

そういいながらデザートのケーキを前に悶々するヒロ・・・。


「縁結び・・・・か。・・・って何考えてんだ私は!!仕事仕事!!」

そう言いながら机に向って小説を書こうとするがいちいち筆が止まってしまっている沙英。


「カ〜二、カ〜二!!焼いて蒸して裁いて泡吹いて〜・・・!!」

ノリノリで歌いながらスケッチブックにカニの絵を描く宮子・・・。


「大きく・・・大きく・・・」

ひたすら何かの宗教の信者のように布団の中で同じ事を何度もつぶやくゆの・・・。



そんなそれぞれの思い渦巻く温泉旅行が始まろうとしていた・・・。


続く。




あとがき


どもぽちゃです。

ひだまりアップ遅れました!!

今回は温泉旅行の序章です。

まだ出発もしてません!!

うーんありきたりな展開でごめんなさい!!

次回からはカプとか意識して書こうかなと思っております。

じゃ、また!!