小説

ひだまりスケッチ#5



「2月9日 揺られ揺すられゆのられて・・・」



青森方面へと向かう列車。

車窓から見えるのは・・・緑、緑、緑・・・・。

田舎の情緒があふれる街並みを抜けていくその列車に乗っていたのはこれから宮子が当てた温泉宿に行くひだまり荘メンバー御一行だ。

朝が早かったせいかゆのはスゥスゥと可愛らしい寝息を立てている。

グラグラと動く首はその内に隣の席に座る宮子の肩に乗せられた。

「あらあら・・・ゆのさんったら子供みたいね?」

「ははは、じゃあ、そのゆのを支えている私はさしずめ姉といった感じですかな?」

宮子がゆのを起こさないように体を微動だにせず、会話を続けている。

「あら、お母さんじゃなくてお姉さん?」

「うん!!私なんぞがヒロさんのポジションを取るなんて!!」

「へ?」

キョトンとするヒロの横でプッと笑う沙英。

「ちょっとなによ沙英まで!!私、そんなに老けてみえるかしら?」

「いや・・・そういうことじゃなくて!!」

そんな会話をしているうちに列車は目的の駅に着こうとしていた。


「ゆのっち起きろ〜!!」

「ゆのさん、起きて!」

体を揺さりながらゆのを起こそうとする宮子とヒロ。

「ん・・・」

ゆのは重い瞼を開けると、トローンとした目で目の前にいる親友を見た。

「おぉ起きた!!」

それと同時に列車が止まった。

どうやら駅についたらしい。

そんな状況とも知らずゆのはウトウトとそっと宮子の頬に手を伸ばす


「へ?」

その思わぬ行動に柄にもなく一瞬ドキッとする宮子。

「あれ・・・?私のジンギスカンは?」

「は?」


寝ボケ眼のゆのの腕を引っ張りながら、4人は慌てて列車を降りる。

「はい、ゆのさんココア!!」

「すいません・・・ふぁ!!」

ようやく目が覚めてきたゆのは駅の自販機でヒロにココアを買ってもらい、それで確実に目を覚ましていく。

「じゃあ、こっからはバスのわけだ!!」

「うん・・・そうね。」



ゆのたちがバス停に着くとすぐにお目当てのバスが到着し、それに乗りこむ。

ここでゆのは大きなミスをしていたことにまだ気づいていなかった。


バスが走り始め、しばらくして、ゆのはようやくその異変に気がついた。

「うぅ・・・酔った。」

バスが走り始めて30分ほどして、ゆのは顔を青くしてハンカチで口を抑えていた。

「大丈夫ゆのっち?」

「顔青いよ?」

心配そうにゆのを見る3人。

どうやらさっき飲んだココアがきたらしい。

「少し横になる?」

「はい・・・。」

ヒロに促されるまま横になろうとするゆのにすかさず宮子が膝を明け渡してやる。

「椅子に直接頭つけたら余計に酔うでしょ?私のリラックス膝枕を使いたまえ!」

「ごめんね・・・宮ちゃん。」

普通なら申し訳なく遠慮するところだが事態が事態なだけにここは宮子の好意に甘えさせてもらう。

「どお?」

「うん・・・いい気持ち!!」

あまりの温かさにまた眠ってしまそうな勢いだ。

「宮子特製リラックス膝枕・・・今なら12か月分割払いできますがいかがいたしましょう?」

「通販!?」

今すぐ、頭を上げないと!!と焦るゆのだったがどういうわけか頭が上がりそうにない。

それほどまでに宮子膝枕は気持ちが良かった。

「ん・・・でも分割してもいいからもう少しこのままでいたいな・・・なんて。」

少し照れくさそうに言うゆのに、宮子は意表を衝かれたか少し黙ってしまう。

そして、再び瞼を落としていくゆの。



「ちなみに弾力を求めるなら、ヒロリラックス膝枕がお勧めかと・・・」

最後まで言い切る前に、ゆのの頭上で鈍い音が響いた。

そのせいで落ちていた瞼がまた再び少し持ち上げられた。


目的の温泉卿まで・・・あと少し。


あとがき


どもぽちゃです。

今回は温泉卿に向かうまでのショートストーリーです。

少し宮子×ゆのって感じで書きました。

初々しい見てるこっちまで恥ずかしくなるようなイラつくようなそんな関係の男女カプも好きですが、こなかがのような百合カプも結構好きなのですよ。

しょっちゅうは無理かもですが機会があればどんどん書いていきたい所存であります!!

さて、次回からはいよいよ温泉に行きますよ?

じゃ、また!!