小説
らき☆すた
「小神あきらの劇奏」
ステージ開幕まで残り5分前・・・。
あきら念願の大舞台・武道館でのソロライブ開催ということで主役のあきらはもちろん、アシスタントの白石みのるを始めとするスタッフ一同は気合いを入れた準備を進めていた。
リハーサルは途中あきらが駄々をこね色々と演出などに注文をつけたりとあったがそれでも準備はスムーズに行われていた。
あきら自身も初のソロライブということでテンションは自然と上がり、リハ中に歌詞を途中でトチることもなく絶好調だった。
そして、当日・・・。
あきらの控え室にはゴトゥーザ様、柊姉妹、日下部みさおなどと小神あきらを支えた人物たちの祝福の花束が多数届いており、その人たちも今回このライブを見に来てくれているらしい。
客席には、会場いっぱいの客たち・・・。
そのざわめきが舞台裏にまで響き、スタッフたちをの気も高ぶらせる。
そんな中、一人沈黙を守り、舞台袖の椅子に座りスタンバイしているあきらの姿があった。
あきらは白い水玉模様の入った着物に身を包み、幕が上がるのをただひたすらに待っていた。
足は・・・ガタガタと震えている。
本番前の水分補給はなるべく控えた方がよいというのに手が自然と水の方へと行ってしまう。
喉が、口が・・・ひたすらに水分を求めていた。
それほどまでにあきらの口は渇き切っていた。
別に舞台上のライトが熱いとかそういうことではない・・・。
足が震えるのも別にアシスタントの白石やスタッフに苛立ちを示しているわけでもない。
むしろ、ここまでやってくれたスタッフにはちょっぴりは感謝してるくらいだ。
口には出さないが・・・。
あきらを襲っているのは極度の緊張・・・。
いくらスーパーアイドルの小神あきらといえど直に大勢の人の前に立つことがあまりない。
そんなあきらにとって武道館という大舞台は自然と彼女の心を強張らせていた。
今になってステージに立てる喜びより不安の方が一気に押し寄せてきたことにあきらは激しい困惑していた。
それは時計の針が進むたびに強くなっていく。
(・・・なんとかなんないの?こんな足でステージに立ったらみっともないったらありゃしない!!)
あきらは足を叩き出し、必死にそれを止めようとした。
だが全く止まる気配がない。
あきらの不安、焦りとはよそに時間は非情にも進んでいく。
時間は4分前となっていった。
時計を見るたびにあきらは不安に襲われる。
今すぐここから逃げ出したい・・・。
そんな衝動にまで駆られた・・・。
(バカバカ!!何てこと考えてんのよ私ってば!!全く・・・全く・・・!!)
一呼吸をし落ち着きを取り戻す・・・。
(ふー・・・こんなんじゃ一流アイドルとしての名が廃るわ・・・。らっきー☆ちゃんねるみたいに自然に・・・自然にしてりゃいいのよ!!)
そう頭に暗示にも似た様な感じで刻みこめると、心を落ち着かせていった。
そして、2分前・・・。
「・・・!!」
再び足が異常なまでに震えだす。
もはや病気ではないかと疑わしくなりそうになるその足の震えを目の当たりにしたあきらはただただこの震えが自然に止むのを待つしかなかった。
緊張のあまり泣き出しそうになる・・・。
しかし、最後のトリの為に涙は取っておかなくちゃならない・・・。
ここで泣く訳にはいかない・・・。
そんな思いだけがあきらのはち切れそうな感情を必死に抑えてた。
息も苦しくなる。
こんなんでちゃんと歌が歌えるのか疑わしくなってくる。
息を大きく吸い込み深呼吸3回・・・。
それでもあきらの緊張は解けることはない・・・。
このままステージに臨まなければならないのか・・・。
そう絶望に打ちひしがれていた時だったあきらの後ろで声がした。
開幕1分前のことだった。
「小神さーん、スタンバイお願いします!!」
「あ、はい・・・!!」
あきらはスタッフの指示通り椅子から立ち、マイクを渡されスタンバイに入った。
あきらは胸に手を当てながら、横目で先ほど自分に声をかけてきた人物を睨みつける。
その人物は白石みのるだった。
よく見ると彼はインカムのマイクを付けている。
「何の用?あんただって分かるでしょ?私これから出なきゃなんだけど・・・?」
あきらはそれに気づいたが敢て無視して、とりあえず用件を手短に聞いた。
「あー・・・あきら様この白石、あきら様の一曲目のサビの部分であきら様のアシストの為エアギターでもやろうかと思うのですが・・・。」
その言葉にあきらの目は見開いた。
そして同時に客席に響くのではないかというくらいの声で白石に詰め寄った。
「あぁ?これ誰のライブだと思ってんの!?あんたごときが出しゃばんないでくれるかな?っていうかエアギター?何それ・・・!!ちょっと古いんじゃないの!?」
スタッフの止めも聞かずあきらの白石への猛攻は続く。
唯一の救い・・・それはあきらのマイク音源が入ってなかったことにあるだろう。
かなり響いたあきらの声も観客の歓声の大きさに消されたらしい。
「もっとこう斬新なのとかってないの?っていうか・・・っていうかあんたのアシストなんていらないわよ!!バカ石!!」
あきらの怒声が終わると、白石は静かに口を開いた。
「じゃあ、そんな顔しないでくださいよ?」
「・・・は?」
あきらには一瞬白石の言っていることが分からなかった。
スーパーアイドルを捕まえて”そんな顔”とは・・・とか突っ込もうとは思ったがすぐに止めた。
あきらも気づいたからだ。
泣きだしそうになっている自分の情けない顔に・・・。
「これからお客さんに元気を・・・パワーを与える側のあきら様がそんなんでどうするんですか?もっとスマイルスマイル!!」
そう言いながら白石はこれでもかと言うほどの極上スマイルを作って見せた。
その顔はとてもおかしくて・・・あきらを自然とイラッとさせると同時に普段の”小神あきら”の顔に戻していた。
「小神さん10秒前カウント入ります準備してください!!」
スタッフの言葉にあきらはスタンド位置につく。
「・・・うっさい!!余計なお世話よ!!」
あきらは少しふてくされたように言うと同時にステージへと走り出した。
しかし、白石の姿はそこにはなかった・・・。
「・・・・!!」
舞台に登ったあきらを襲ったのは武道館を埋め尽くすファン達の歓声・・・。
あきらは目を丸くするとともに声を失った・・・。
足の震えも・・・息苦しさもない・・・。
ただあったのは真っ白な世界・・・。
白石にあれほどの事を言っておいてこのざま・・・。
ステージから出てきて十数秒・・・。
沈黙を保つあきらに客たちの歓声はざわめきへと変わりだした。
「どうしたのかな?あきら様・・・。」
「さぁ・・・?」
「ファイトだぁ!!あきら様!!」
「ちょっと日下部、腕当たってるわよ!!」
柊姉妹とみさおたちもあきらの様子に困惑していた・・・。
それ以上に困惑していたのはもちろんあきらだったが・・・。
「あ・・・」
文字一つ出たところで次につながる言葉が見当たらない・・・。
声が出なかった。
そんな時だった。
ステージの照明が突如暗くなった。
「おはらっきー!!!!!!」
スモークと共に奈落を使ってあきらの後ろからその男は出てきた。
「白石・・・。」
あきらがそう呟くと急に予定されてなかったBGMが流れだした・・・。
「さぁ小神あきらソロライブ最初の曲は曖昧ネットだーりん!!」
曲が流れる・・・。
客の反応はまだ来ない・・・。
先に反応がきたのは・・・小神あきらだった。
あきらは曲に合わせて激しく動く白石のエアギターに最初は唖然とするあきらだったが白石の動きと比例するかのように激しい苛立ちを覚えた。
「お前は・・・何やってんのよ!!バカじゃないの!!」
今度はマイクで大声で怒鳴るあきら・・・。
その声にようやく客たちは反応を示した・・・。
再び湧き上がる歓声にあきらは驚いた。
「ほら、みなさんはあきら様のお声が聞きたいらしいですよ?」
「わ、分かってるわよそんなこと!!当り前じゃない・・・。」
そして大きく息を吸い込む・・・。
「おはらっきー!!」
「おはらっきー!!」
あきらが元気いっぱいに叫ぶとその分の元気が会場から返ってきた。
それにあきらは少し驚くもようやく笑顔を見せた。
そして同時に気持も自然と高ぶって来た。
ライブならではの臨場感・・・空間をファンのみんなと共有している喜びがようやくあきらの気持ちを奮い立たせた。
「みんな、心配かけてごめんね!!今夜だけの特別ならっきー☆ちゃんねる・・・始まります!!みんな最後までよろしくプリーズ!!」
それと同時に一気に高まる会場のテンション・・・。
「・・・礼は言わないわよ?」
あきらは表情を変えることもなくボソリとそう呟いた。
視線を白石に1秒・・・。
それだけ交わしあきらはすぐに前を見た・
「じゃあ、このバカが勝手に変えちゃったけど最初は曖昧ネットだーりん!!みんな白石じゃなくて私の歌に注目してね!!」
さっきとは別人のようだった・・・。
曖昧ネットだーりんが流れたとたん、あきらは今までの小神あきらを不思議と完全に取り戻していた。
そんなあきらの様子にホッとする3人・・・。
「あ、あきら様・・・元気になったね?でも急になんで・・・?」
「さぁ・・・?この曲があきら様にとって安心させる曲とかじゃないの?」
「師匠ー!!グッジョブ!!」
かがみの言ったことはまさしくその通りだったのかもしれない・・・。
あきらの脳内では今はライブという名目のらっきー☆ちゃんねるといった感じだろう・・・。
バックで流れる曖昧ネットだーりん・・・。
横にさも当然のようにいる白石・・・。
それだけであきらの心はかなり救われたに違いない・・・。
あきら自身には自覚がないだろうが・・・。
その後ライブは無事終わり、幕が降りた頃にはあきらは疲労感なんかよりこれ以上にない達成感に溺れていた。
そんなあきらを出迎えたのは他でもない白石だった。
白石はお疲れさまと彼女にスポーツタオルを渡す。
あきらは無言でそれを受け取る・・・。
「ライブ・・・よかったですよ?自分、凄く感動しました・・・!!」
「あっそ・・・。あんたが司会やってたアニメのライブとかとどっちがよかった?感動した・・・?」
その質問に白石は本気で困惑している。
今日はそれ関係の方々も多数来ているので軽はずみなことは言えない・・・。
「えーそう来ますか・・・。あきら様のライブはあきら様のライブでまたハルヒの時とは違う爽快感といいますか・・・・違う素敵な空間が広がっていました。」
「なにそれ?答えになってると思ってんの?」
やはりその答えでは不満げの様子・・・。
また必死に頭を絞る白石・・・。
「もういいわよ・・・!!ったくあんたのせいで一時はどうなることかと思っちゃったわよ!!」
「すいませんでした・・・。」
白石が謝ると、あきらはそっぽを向く。
「楽屋にかがみちゃんやつかさちゃんやみさおちゃん達が来てるみたいだから・・・じゃ!!」
「あ、はい!!」
あきらはそう言うと疲れた足を引きずって歩きだした。
「あと、あんがとね・・・」
去り際にあきらはボソリとそう呟いた・・・。
「は?」
よく聞き取れずつい聞き返してしまう白石・・・。
「うっさい!!飯よ飯!!かがみちゃんたちも誘ってご飯に行きましょ!!今晩は来てくれた感謝の意も込めて特別におごってあげるわ!!もちろんあんたもね!!」
そのあきらの言葉に白石は自分の耳を疑った。
普段のあきらからは聞くことのできなさそうな言葉・・・・。
まぁ本人にはもちろん言わないが・・・。
「したっぱにもたまには奢ってトップの貫録見せなきゃダメなのよ!!楯つかれちゃ敵わないし・・・。」
言いわけじみたその言葉に白石は突っ込まずにはいられなかった。
「あの・・・それ言っちゃったら意味ないんじゃ・・・?」
そんな突っ込みにあきらがまたまた喝を入れる。
「本当にうっさいわね〜・・・。あんたも男なら黙って私についてきなさい!!」
「はい。どこまでもお供します!!」
よく意味は分からなかったが、白石は声を張り上げ先先歩いていくあきらを小走りで追いかけていった。
そんなあきらの耳は会場の熱がまだ残ってるのか・・・ちょっぴり赤かった。
完
あとがき
どもぽちゃです。
キャラ別エピソード?的な感じのシリーズ第1弾です。
かなり短いですが・・・www
タイトルはまあこれが一番しっくり来るかなと・・・。
ホントはまんま使いたかったんだが仲間内からダメ出しがきたwww
今回これを書いたのはらっきーちゃんねるの公録の影響です・・・。
ただただ玉露共に感動してました・・・。
なのでちょっと中の人感が入ってます。
また1から聞こうかな?www
みさおやかがみ達はアニラジらっきーちゃんねる歴代パーソナリティということでまぁゲスト出演です。
ラジオを聞いてない方は全く分かんないですね?www
個人的にはかおりんが可愛かったなぁ・・・。
トゥルトゥルがね?
もうツボでした。中毒になりかけた(汗
あきら様をもう少し可愛く書きたかった!!
まぁ白石君はもともとラジオ聞いてた頃から好きだったので!!
らっきーちゃんねるはあきら様はもちろんだが白石君はいないと始まらないからね?
またあきら様メインで書くかもね?
じゃ、また!!